ウイルスや菌、寄生虫などの病原体が体内に侵入した際にそれを排除するシステムとして免疫系が存在しているが、これは自然免疫系と獲得免疫系(抗体を用いる免疫系)からなり、病原体の侵入を最初に察知するのが自然免疫系といわれている。
自然免疫系において中心的な役割を果たすのがToll-like receptor (TLR)という受容体。
これは細胞膜に存在するタンパク質の一種で細胞外の病原体を認識し、細胞内にその情報を伝えることにより、炎症性サイトカインなどつくられ抗ウイルス反応が引き起こされる。
ヒトのTLRは10種類が発見され、免疫に携わる細胞を活性化している。その中でTLR5は細菌の鞭毛の成分であるフラジェリンを認識する受容体として発見されていた。
TLR5が腸管における病原細菌の侵入を感知する重要なセンサーであるということが明らかになってきた。腸チフスの原因菌であるチフス菌は細胞内に入り込み、TLR5の機能を逆手にとって全身に感染を広げていくことがわかった。
TLR5は、小腸の上皮細胞というより、小腸の粘膜固有層と呼ばれる部分に存在する樹状細胞(CD11c陽性細胞)に特異的に発現していることが分かった。
正常なマウスの小腸の粘膜固有層の「CD11c陽性細胞」ではフラジェリンに反応して炎症性サイトカインを産生し、炎症反応を引き起こすが、TLR5欠損マウスでは、これらの炎症性サイトカインの産生は完全にない。つまり、小腸の粘膜固有層のCD11c陽性細胞が、TLR5を用いて病原細菌に対する感染防御を行うことがわかった。
今後は、腸チフスの治療薬として、TLR5の機能をブロックする医薬品が有力になってくる可能性がある。
さらに、腸管で病原細菌に対して強く免疫反応を起こす細胞(粘膜固有層のCD11c陽性細胞)は、薬剤などで刺激することにより免疫活性化を起こすため、免疫活性化により疾患を治療する免疫療法には必須の細胞で、この細胞の性質を解析することによって、新しい免疫療法の確立に結びつくことが期待される。