脂肪肝になると、肝臓が神経と脳を通じて指令を出し、全身の脂肪組織を燃焼させ、やせさせることを、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(内分泌代謝学)の研究チームがマウスの実験で発見し、米科学誌サイエンスに発表した。
実験では、高カロリー食を与えて太らせた糖尿病のマウスを遺伝子操作で肝臓の脂肪を過剰に蓄積するようにしたマウスについて、肥満や基礎代謝などの経過を観察。遺伝子操作、脂肪肝と脂肪肝でない2グループを作り経過を比較した結果、脂肪肝のマウスは1週間後には約2倍に肥大した脂肪肝になったが、全身の脂肪組織が縮小。特に精巣付近にある脂肪の塊(精巣上体脂肪)は約半分になった。また、基礎代謝が実験前の1.3倍に向上し、インシュリン抵抗性が上昇し血糖値が低下するなど、糖尿病に改善傾向がみられた。
さらにメカニズム解明のため、脳と脂肪組織をつなぐ交感神経の遮断実験を行い、エネルギー消費の増加は交感神経の活性化によるものと確認した。
肝臓と脳を結ぶ迷走神経を切断すると脂肪分解は進まないことも分かった。
これらのことから片桐教授は、脂肪肝がやせさせる信号を迷走神経を通じて脳に発信。脳は肝臓に脂肪がたまったこと感知し、交感神経を通じて全身の脂肪組織に脂肪を燃やすよう指示していると結論づけた。つまり「肝臓を起点に、脳を経由して情報を伝える神経のネットワークで、肥満を防止している」ということらしい。
「脂肪肝は、肥満になるのにブレーキをかけ、体重を調節している。ヒトにも同様の機構があると考えられ、指令を促進する物質を開発できれば、肥満や糖尿病の治療薬になる」と話している。
肝臓がカロリーのセンサーとして働き、基礎代謝を調節する機能は、これまで全く知られていなかった発見ゆえに、これらの神経ネットワークに作用する肥満解消薬の開発されていくことが期待される。