大阪バイオサイエンス研究所などの研究グループは、風邪薬や鼻炎薬などに含まれている抗ヒスタミン薬を飲むと眠気が起きる仕組みを解明した。
目が覚めるときに働くたんぱく質を薬が抑制していた。不眠症の新しい治療法としての抗ヒスタミン剤の利用の可能性が示された。
抗ヒスタミン薬は花粉症などアレルギー症状を抑える薬で、市販薬では塩酸ジフェンヒドラミン製剤として『ドリエル』が市販されている。抗ヒスタミン薬が作用する体内の「ヒスタミンH1受容体」と呼ばれるたんぱく質を持たないネズミを遺伝子操作で作り研究を行ったところ、通常なら目覚めに向かって睡眠が浅くなるときでも深い眠りが続き、なかなか起きなかった。逆にこのたんぱく質の働きを強めたネズミの実験では、目が覚めやすく、起きている時間も長くなった。
ヒスタミン神経細胞の起始核である後視床下部・結節乳頭核(TMN)には,EP4 サブタイプのPGE2 受容体が主に発現していることが明らかとなった。
オレキシンAを介した覚醒にはH1 ヒスタミン受容体を介した神経伝達が用いられていることが明らかとなった。
PGD2 は、ヒト・サル・ネコ・ラット・マウスに自然な睡眠を引き起こす内因性の睡眠物質であるが、PGE2 は覚醒を促す。
PGD2 ⇒ アデノシンに変換⇒ アデノシンA2A受容体発現神経を刺激
⇒腹側外側視索前野 (VLPO)の活動を亢進 ⇒GABA 作動性の抑制性神経投射
⇒ヒスタミン性覚醒中枢結節乳頭核(TMN)を抑制 ⇒睡眠誘発
PGE2 やオレキシン⇒ ヒスタミンH1受容体に作用
⇒TMN を起始核として脳内へ広汎に投射するヒスタミン神経系を刺激
⇒覚醒を誘発
睡眠の機構については種々の神経伝達物質やホルモンの関与があり、入眠時・レム睡眠時、ノンレム睡眠時・覚醒時によって投射する神経なども違っていて複雑であることがわかっている。眠るということ一つとっても人間の体というのは非常に複雑にできているんだなといまさらながら、思ってしまうのである。