人間をはじめとした恒温動物に備わった、「温度感覚伝達の脳神経メカニズム」が解明され、米国科学アカデミー紀要(オンライン版)で公開されている。
”A thermosensory pathway mediating heat-defense responses ”
今までの研究では、意識の上で感じる暑さや寒さなどの皮膚温度感覚を脳に伝達する仕組みを破壊しても自律的な体温調節機能に影響がないことから、体温の調節に必要な温度情報は、意識の上で温度を知覚するための感覚情報の伝達とは異なった仕組みで脳内を伝わることが示唆されていた。
今回、ラットを用いた実験で、皮膚を温めたときに活性化される神経細胞が、橋と呼ばれる脳領域にある結合腕傍核に密集して存在し、その神経細胞が暑さに関する情報を体温調節中枢へ直接伝達することが発見された。
ラット胴体周囲を広範囲に温めて、暑熱環境に似た状態にすると、足の裏や尻尾の皮膚血流が増加する放熱反応が見られた。
結合腕傍核の神経伝達を抑制すると、この放熱反応が起こらなくなった。
逆に結合腕傍核の神経細胞を活性化すると、胴体周囲を温めた時と同じような放熱反応が起こった。
人間の体は、以外とわかっていないことが多いという感じである。