ヘリコバクター・ピロリ菌が作り出す「CagA」と呼ばれるたんぱく質によって、がんが発症することが北海道大の研究チームのマウスを使った実験で証明された。
この研究は、ピロリ菌が直接、生物の体内でがんを引き起こすことを確かめたのは初めての研究ということで、全米科学アカデミー紀要(電子版)に発表された。
全身の細胞でCagAを作るよう、受精卵の段階で遺伝子操作したマウスを222匹作った結果、うち2匹は約1年半後には胃がんを、4匹は小腸がんを17匹が白血病などの血液がんを発症し、CagAが胃がん以外にも関係する可能性も浮かんだ。
一方、通常のマウス100匹も観察を続けたが、がんは発症しなかった。
実験では、マウスの体内で「SHP-2」という酵素に関係した酵素が異常に活性化していることも判明された一方、CagAとSHP-2が結合できないようにしたマウスでは、がんは発症しなかった。
研究グループは、「ピロリ菌に感染した人すべてが胃がんになるわけではないが、除菌の有効性を示唆する結果であるとし、SHP-2を標的にした治療法の確立も求められるとしている。
現在、ヘリコバクター・ピロリ除菌に用いられる薬剤としては、アモキシシリン、クラリスロマイシン、ランソプラゾール、オメプラゾールが知られている。